重要なのは「食中毒予防の3原則」

　米国CDC（疾病管理予防センター）では、リテール・フードサービス施設（飲食店や販売店、ホテル・レストランなど）で発生した食中毒の最も重要なファクターについて、下記の5項目に集約しています^※1。

　ここで、本コラムの第2回で紹介した、厚生労働省のリーフレット「あなたのお店は大丈夫？ 衛生管理を『見える化』しませんか？」を思い出してみましょう^※2。リーフレットでは、厚生労働省は飲食店の衛生管理を、以下の9項目に集約しています。

1. 　原材料受け入れ時の管理
2. 　施設、器具等の洗浄・消毒
3. 　トイレの維持管理、清掃、消毒
4. 　交差汚染、二次汚染の防止
5. 　衛生的な作業着
6. 　適切な手洗いの実施
7. 　従事者の健康管理
8. 　低温での保存
9. 　適切な加熱

　この2つを見比べてみると、共通している部分が多いことに気が付くと思いますか。さらに、この「米国の5項目」と「日本の9項目」を、皆様に馴染のある「食中毒予防の3原則」（つけない、増やさない、やっつける）と重ね合わせてみましょう。以下のように分類できます。

※青色はATPふき取り検査による清浄度確認が可能な項目

　日本でも海外でも、私たち食品衛生の関係者が戦う“敵”が微生物であることに違いはありません。食品微生物の制御では、「つけない」「増やさない」「やっつける」という「食中毒予防の3原則」に集約されることがわかります（なお、ノロウイルスの場合は、「持ち込まない」を加えて“4原則”と称する場合もあります）。
　上記の②～⑥およびⒷⒸの監視にATPふき取り検査は有効性を発揮します。今後、食品工場や飲食店が「食の安全・安心」を謳う上で、環境の衛生管理の状況をATPふき取り検査などで「見える化」することは、今後、非常に重要な取り組みになるかもしれません。

※1　 FDA; Managing Food Safety: A Manual for the Voluntary Use of HACCP Principles for Operators of Food Service and Retail Establishments https://www.fda.gov/media/71976/download
※2　 厚生労働省リーフレット「あなたのお店は大丈夫？ 衛生管理を『見える化』しませんか？」 https://biochemifa.kikkoman.co.jp/kit/atp/article/article_detail_65/

「つけない」の検証にATPふき取り検査は有効！

　米国のHACCP関連の研修テキストでは、図1に示すように、微生物ハザードが持ち込まれる経路を「ヒト」「原材料」「環境」、その制御方法については「汚染の予防」「殺菌」「増殖の制御」という3点に集約しています^※3。
　「つけない」ための管理項目が非常に多いことがわかります。特に、従事者の手洗いや、食品接触面（あるいは食品接触面に近い場所）の清浄度は、食品の安全性に大きな影響を及ぼす可能性があります。
　ヒトの手指や、器具や設備などの表面の「洗浄」が非常に重要になります。では「きちんと洗浄できたか？」を、どのように確認すればよいでしょうか。普段は、洗浄後の状態を目視点検している場合が多いかもしれません。しかし、微生物やアレルゲンなどのハザードは、ヒトの目には見えません。そうしたハザードを「見える化」できる簡便・迅速なツールを有効活用して、その結果を現場の改善に有効活用することは、食品安全の確保だけでなく、取引先からの信頼の向上、強固なブランド力の確立につながるでしょう。また、現場の従業員の一人ひとりが、日常的な衛生管理に自信や誇りを持つことにもつながると期待できます。

図1　ハザードはどこからくる？どう防げる？

※10　FSPCA (The Food Safety Preventive Controls Alliance) Participant Manual - Preventive Controls for Human Food (First Edition), 2016 https://d1vy0qa05cdjr5.cloudfront.net/c6f30ca0-84ae-4613-bec0-5439702d4b9e/Instructor%20Resource%20Portal/FSPCA%20PC%20Course%20Participant%20Manual_V1.2_public.pdf

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